PanasonicのBtoB戦略に関する雑記


【大河原克行の「白物家電 業界展望」】パナソニックのBtoBシフトは成功するのか〜北米市場の取り組みを追う - 家電Watch

このBtoBシフト、以前からPanasonicが進めているが、なかなか面白いと思う。Panasonicにとって何がBtoBシフトで何を目指しているのか。

 

BtoBシフトというとなんだか新しそうだが、元々Panasonic松下電器産業だった頃、松下電子部品松下電工という別会社があった。

Panasonicの沿革を見てみると、

2003年(平成15年)4月 (株)東芝とブラウン管事業合弁会社松下東芝映像ディスプレイ(株)(現在のMT映像ディスプレイ(株))を設立
松下電子部品(株)、松下電池工業(株)を、株式交換により完全子会社化
グローバルブランドを「Panasonic」に統一
2004年(平成16年)4月

松下電工(株)株式の追加取得により、同社・パナホーム(株)及び傘下の子会社を連結子会社化

2003年に当時のブランド National / Panasonicから、Panasonicに統一した際に、松下電子部品を、2004年に松下電工パナホームを子会社化している。

その後、2008年に会社名自体を松下電器産業からPanasonicに改名し、いまではすっかり?松下電器ではなくPanasonicという社名が一般的になっている。

「いやぁうちにはPanasonic製品なんて無いよ〜」と思っている人はいるだろうが、ちょっと前まで、あるいは今でもコンセントや電灯のスイッチを見るとNationalと刻まれている家が多い。こういった目に見える部分だけでなく、家の内側の配線などは、旧 松下電工等の得意とする分野である。

冒頭の記事では、北米でのBtoBの取り組みが記事になっているが、日本では既に住宅関連事業において、随分昔からBtoBの巨大な基盤を確立していたのである。

今さら言うほどのことでもないが。

その他、BtoB分野では、Avio(アビオニクス)と呼ばれる航空機内のモニター、エンターテイメントでも大きなシェアをとっている。


【CES14】航空機へのエンタメ事業から始まったパナソニックの“B to B”シフト? | レスポンス

 

 PanasonicはBtoB事業において、車載関連事業、住宅関連事業を中長期的な成長の柱に据える方向に大きく舵をとっている。住宅関連事業での取り組みとして、興味深いのが、藤沢サスティナブル・スマートタウンである。

Fujisawaサスティナブル・スマートタウン公式サイト|FujisawaSST (藤沢市)

タウンコンセプト|プロジェクト概要|Fujisawa SST(藤沢サスティナブル・スマートタウン)

大きな特徴は、1‚000世帯もの家族の営みが続くリアルなスマートタウンとして、技術先行のインフラ起点でなく、住人 ひとりひとりのくらし起点の街づくりを実現することです。 私たちはまず100年ビジョンを掲げ、それを達成するためにタウンデザインとコミュニティデザインのガイドラインを設けました。その目標を共有した住人た ちがくらし、交流し、より良いくらしをつくるアイデアを出していきます。

なんだかぼんやりとした特徴ではあるが、このコンセプトを実際に実現したことは特筆すべき事だと思う。具体的な目標も立てている。

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環境問題でのCO2削減は最近ではあまり話題になっていないが、エネルギー目標の再生可能エネルギー利用率30%以上はなかなか大きな目標だと思う。

経済産業省資源エネルギー庁のサイトによると、

日本の電力構成における、3.11.前の再生可能エネルギーの比率は約10%で、水力を除くと、約1%強です。

 とあるので、いかに30%という数値が大きいかと感じられる。

具体的な実現方法はよくわからない。ただ約600世帯、そのすべての家で、太陽光発電システム、蓄電池ユニット、家庭用燃料電池を装備するようで、はたしてそれだけで30%が実現できるのか楽しみではある。

 さて、冒頭にある北米におけるBtoB事業への取り組みであるが、昔、IT業界が個別製品からソリューション型へと移っていったように、電機産業もソリューション型へと移行しつつある。以前からソリューション型の事業への変換がPanasonicの目標であったが、その成功例が北米だと思われる。

津賀社長が優等生として挙げる優良事業であるAvioの実績を、ブランド価値の向上という点で、コンシューマ事業に活用するのは面白い。

とはいえ、思いつく事業は、テスラなどの車載電池、警察・消防などのタフブックソリューション、Avioであり、成功しているとはいえ、なかなか一般の消費者からは見えにくい分野である。

 記事によると、カナダではテレビ、オーディオ機器におけるPansonicブランドの認知度は高いようだが、アメリカではあまりいい話を聞かない。液晶テレビはLGなどに完全に奪われた感がある。海外ドラマやドキュメンタリー番組などでテレビが映ると、なんとなくブランドロゴを見てしまうが、LGの丸いロゴはほんとうに多い。

そんな中で一般の消費者向けの目に見える分野として2014年CESで以下のように述べている。

BtoBは、多くの「顔」を持っているが、これはパナソニックにとっては、顔にならない「顔」である。コンシューマの「顔」を新たに作っていかなくてはならない。その顔になりうるのが、パナソニックビューティーで展開している美容商品や、キッチン向けの調理小物などである。

冒頭の記事でも、以下のように述べており、美容商品に掛ける意気込みを感じられる。ただ、小物商品であるため、ここで大きな売上を得られるのかは難しいと思う。そんなこともあって、BtoBへシフトしていくのではないだろうか。

いまでも、パナソニックは、テレビメーカーというイメージが強い。だが、日本市場やアジア市場向けには、強い理美容製品を持っている。こうした製品を通じて、パナソニックの知名度をあげることに力を注いでいきたい

こうやって見ていくと、BtoBへシフトしていくのは、レッドオーシャンと化したBtoC事業での競争を避けているように思われる。

いったい何を持ってBtoBシフトといっているのだろうか。

2014年のCESでのインタビューにBtoBシフトの意味が述べられている。

【大河原克行のデジタル家電 -最前線-】「目新しい技術訴求がないCESだった」〜パナソニック津賀社長インタビュー - AV Watch

ある特定のセグメントのお客様に対して、なにでお役立ちするのかを、明確に訴求する形に変えていきたい。しかも、そこに対して、他社が簡単に真似ができないというものをやっていきたい。これにネットワーク、サービスを加えて、ソリューションにつなげていく。ここにBtoBシフトの意味がある

今のところ見えている「ある特定のセグメント」とは、車載関連事業、住宅関連事業である。ただ、「なにでお役立ちするのか」はまだあまり見えてこない。車載であれば電池以外に、SYNC3やAUPEO!なのかもしれないが、それだけではないと思いたい。住宅関連事業については、太陽光パネル、家庭用蓄電池、家庭用燃料電池が「お役立ち」なのかもしれないが、現状では車載以上に、よく「顔」が見えてこない。

BtoBシフトを進めていく意味はわかるが、いったい何をどのようにして進めていくのか、今後のニュースを楽しみにしたい。